4年国語「ごんぎつね 情景を手がかりに―もずの声とひがん花を読む」

授業実践

「ごんぎつね」の授業も、少しずつ物語の核心へ。

今回は、第4時・第5時の2時間を使って、情景描写に目を向けた。

これまでの授業では、ごんの行動や言葉を手がかりに、ごんがどんなきつねなのかを考えてきた。

でも、物語には、登場人物の言葉や行動だけではなく、

「空はからっと晴れて、もずの声はキンキンひびいていました。」

のように、周りの様子や音が描かれている部分がある。

今回は、ここに注目してみることにした。

「情景」って、何だろう?

まず第4時のはじめに、「情景」について確認した。

単に、

「その場に見えているもの」

を表しているだけではない。

物語の中の情景には、登場人物の気持ちや、その場の雰囲気、これから起こることを考える手がかりになるものもある。

そこで子どもたちには、

「情景は、物語を読むためのヒントになることがある」

ということを伝えた。

ただ、ここでいきなり「この情景は何を表している?」と聞いても難しい。

そこで、まずはみんなで一つの叙述をじっくり読むことにした。


まずは「もずの声」をみんなで分析する

取り上げたのは、

「空はからっと晴れて、もずの声はキンキンひびいていました。」

という一文。

ここは、ごんが兵十の家に近づいていく場面。

まず、

「空はからっと晴れて」

に注目する。

「明るい感じがする」

「天気がよくて、気持ちよさそう」

「何かいいことが起こりそう」

そんな読みが出てくる。

ところが、そのすぐ後に、

「もずの声はキンキンひびいていました」

とある。

「キンキンって、いい音じゃないよね」

「耳にささる感じ」

「ちょっと不安になる」

「何か嫌なことが起こりそう」

と、少しずつ読みが変わっていく。

そこで、

「からっと晴れている」のに、どうして「キンキン」なんだろう?

と考えた。

「明るい感じと、不安な感じが一緒にある」

「最初はいいことが起こりそうなのに、もずの声で嫌な感じがする」

「このあと何か起こるんじゃないかと思う」

子どもたちは、情景を単独で見るのではなく、物語のこれからとつなげて読むようになっていった。


「情景って、ただの飾りじゃないのかも」

ここで、子どもたちと確認した。

物語に出てくる、

「空の様子」
「鳥の声」
「花」
「天気」

などは、ただ場面をきれいにするために書かれているとは限らない。

そこには、

登場人物の気持ちや、その場の雰囲気、これから起こることを考える手がかり

が隠れているかもしれない。

つまり、

「情景も、物語を読むための証拠になる」

ということだ。

ここまでを第4時でみんなで共有した。

そして第5時。

今度は、子どもたちに一つの「証拠」を渡した。


第5時 「ひがん花」から何が読める?

取り上げたのは、

「人々が通ったあとには、ひがん花がふみおられていました。」

という叙述。

今回は、教師がすぐに説明するのではなく、グループごとに考える。

「このひがん花には、どんな意味があるんだろう?」

「もずの声とつながっているんじゃない?」

「ごんや兵十の気持ちと関係している?」

「このあと起こることを表しているんじゃない?」

子どもたちは、本文を行ったり来たりしながら考えていく。


出てきたのは、いくつもの仮説

例えば、

仮説A

村人たちの悲しみを表しているのではないか。

葬式に向かう人々が通ったことで、ひがん花が踏み折られている。

「彼岸花が折れている」
↓
「葬式があった」
↓
「村の人たちが悲しんでいる」

と、情景からその場の雰囲気を考えていく。


仮説B

兵十の気持ちと重なっているのではないか。

「元気のいい顔が今日は何だかしおれていました。」

という兵十の様子と、

「ふみおられたひがん花」

を重ねる。

「元気だったものが、しおれている」

「きれいに咲いていた花が、折られている」

そこから、

「兵十の気持ちも、ひがん花みたいにしおれているんじゃないか」

という読みが出てきた。


仮説C

ごんの未来を暗示しているのではないか。

ここまで来ると、子どもたちの読みはさらに物語の先へ。

「花が折られているから、ごんもこのあと……」

「このあと悪い方向に進んでいくことを表しているんじゃない?」

「ひがん花が、ごんの未来を表しているように見える」

そんな意見も出てきた。

もちろん、ここは「作者が絶対にそういう意味で書いた」と決めつけるのではなく、

本文のどこから、そう考えたのか。

を大切にする。


「もずの声」と「ひがん花」をつないでみる

最後には、二つの情景を並べて考えた。

もずの声

「キンキンひびいていました。」

↓

なんだか不安になる。
嫌なことが起こりそう。

そして、

ひがん花

「ふみおられていました。」

↓

何かが失われている。
悲しさや不吉な感じがする。

すると、

「もずの声も、ひがん花も、このあと起こることを知らせているんじゃない?」

という読みが出てきた。


情景は「サイレン」なのかもしれない

授業の最後に、こんなふうにまとめた。

物語の情景は、ただの背景ではない。

時には、

「このあと、何かが起こるよ」

と、読者にそっと知らせてくれる。

まるで、物語の中に置かれた小さなサイレンのようなものなのかもしれない。

「もずの声」も、

「ひがん花」も、

その後の物語を知ってから読み返すと、また違って見えてくる。

だからこそ、文学を読むときには、

「何が書いてあるか」だけではなく、
「なぜ、ここにこれが書かれているんだろう」

と考えてみることが大切なのだと思う。


今回の2時間で大切にしたかったこと

第4時は、教師と一緒に「もずの声」を読み解く。

第5時は、その読み方を使って「ひがん花」を自分たちで考える。

「先生が答えを教える」のではなく、
一緒に読み方をつくって、その読み方を子どもたちに手渡す。

そんな2時間にしてみた。

そして、子どもたちが集めた「証拠」をつないでいくと、

「もずの声」と「ひがん花」という、一見別々に見えた情景がつながっていく。

物語の細かな一文が、少しずつ意味を持ち始める。

こういう瞬間が、文学の授業のおもしろさなのだと思う。

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