【4年国語】ごんぎつね⑧「ごんぎつねめ」から「ごん、お前だったのか」へ|第六場面の読み深め

授業実践

『ごんぎつね』の第8時は、ついに第六場面の読み深め。

今回の授業では、兵十の心情が大きく変化する場面に着目しました。

兵十が口にする「ごんぎつねめ」という言葉。そして、その後の「ごん、お前だったのか」という言葉。

同じごんに向けられた言葉なのに、そこには大きな違いがあります。

この二つの言葉の間に、兵十の心の中では何が起こったのだろう。

この問いをもとに、子どもたちと第六場面を読み深めていきました。

文の主語に着目して、兵十の視点から読む

まず着目したのは、文章の主語です。

第六場面では、兵十を主語とする文が続きます。つまり、ここでは兵十の行動や目にしたものを中心に、物語が語られているのです。

これまで、ごんの行動や気持ちを想像しながら読み進めてきた子どもたち。

今回は、兵十の側から物語を見つめ直します。

兵十は、なぜごんを撃ったのか。

そして、栗を見た瞬間、何に気付いたのか。

兵十の行動や言葉を手がかりにしながら、二つの言葉の間にある心情の変化を考えていきました。

グループで考える「兵十の心に何が起きたのか」

子どもたちには、今回の事件を解き明かす探偵団になってもらいました。

考える謎は三つ。

  • 謎① 撃つ前の兵十
    なぜ、兵十は火縄銃の引き金を引いてしまったのか。
  • 謎② 撃たれたごん
    銃弾に倒れた瞬間、ごんの心にはどんな思いがあったのか。
  • 謎③ 撃った後の兵十
    栗を見た瞬間、兵十の心に何が起きたのか。

それぞれの謎について、証言メモを手がかりに、グループで考えを整理していきます。

単に「兵十は悲しかった」「ごんはかわいそうだった」と感想を交流するのではなく、叙述を根拠にして、登場人物の心情を読み取ることを大切にしました。

謎① 兵十は、なぜごんを撃ったのか

兵十がごんを撃った理由について、子どもたちの考えはさまざまです。

「またいたずらをしに来たと思ったから」

「うなぎを盗んだこともあって、ごんに悪い印象をもっていたから」

「これまでのことがあったから、今回もごんが何か悪いことをしに来たと思ったんじゃないか」

ここで考えたいのは、兵十にとって、ごんがどのような存在になっていたのかということです。

兵十には、うなぎの一件をはじめ、ごんにまつわる経験がありました。

その経験が、ごんを見る目に影響していたのではないでしょうか。

過去の経験があるからこそ、目の前の出来事も、その延長線上で捉えてしまう。

兵十は、ごんが栗や松茸を届けていたことを知りません。ごんの行動の本当の意味が分からないまま、これまでの印象をもとに判断してしまったのです。

二人の間には、思いがすれ違ってしまう悲しさがありました。

謎② 撃たれたごんの心には、どんな思いがあったのか

次に考えたのは、撃たれたごんの心情です。

ここでは、大きく二つの仮説が生まれました。

一つは、「償いを終えたという覚悟」。

ごんは、これまで自分がしてきたことを分かっていて、兵十に撃たれることも受け入れたのではないか。

毎日、栗や松茸を届けていても、自分のしたことを簡単には許せなかったのではないか。

もう一つは、「思いが伝わらなかった後悔」。

何度も栗や松茸を届けてきたのに、どうして分かってもらえなかったのだろう。

もう、栗や松茸を届けることもできない。兵十に自分の思いを伝えることもできない。

そんな後悔があったのではないか。

同じ「撃たれたごん」の心情でも、子どもたちが想像した思いは一つではありません。

ごんは、自分の過ちを償おうとしていたのか。それとも、兵十に思いが届かなかったことを悔やんでいたのか。

どちらか一つに決めるのではなく、叙述をもとに考えることで、ごんの心の複雑さに迫っていきました。

謎③ 栗を見た瞬間、兵十の心はどう変わったのか

そして、今回の授業の大きな山場です。

ごんを撃った兵十が、土間に固めてある栗を見つけます。

その栗を見た瞬間、兵十は何を思ったのでしょうか。

「ごんが置いていったのかな」

「もしかして、今までの栗もごんが届けてくれていたのかな」

「自分が撃ったのは、いたずらばかりするごんではなかったのかもしれない」

栗を手がかりに、兵十の中で、それまでのごんの見え方が変わっていきます。

これまで、兵十にとってごんは、いたずらをするきつねでした。

しかし、栗を目にしたことで、ごんの行動に別の意味があったことに気付き始めます。

そして、口から出た言葉が、

「ごん、お前だったのか。」

でした。

「ごんぎつねめ」という言葉には、ごんを疑い、悪者だと思っていた兵十の気持ちが表れています。

一方、「ごん、お前だったのか」には、これまでのごんの行動の意味に気付いた驚きや、自分がしてしまったことへの後悔が表れていると考えられます。

栗は、兵十の思い込みを揺さぶる決定的な手がかりだったのです。

二人の思いが、ようやくつながったとき

今回の読み深めを通して考えたのは、兵十とごんの間にあった、悲しいすれ違いです。

ごんは、自分のしたことを償おうと、栗や松茸を届け続けていました。

しかし、兵十はそのことを知らず、ごんをいたずら好きなきつねだと思っていました。

ごんの思いが兵十に伝わったときには、もう、ごんに直接確かめることはできません。

「ごん、お前だったのか。」

この言葉には、ごんの行動の意味に気付いた驚きだけでなく、気付くのが遅すぎたことへの後悔も重なっているのではないでしょうか。

二人の思いがつながった瞬間であり、同時に、取り返しのつかない悲しさが生まれる瞬間でもあります。

第六場面を兵十の視点から読み直すことで、物語の結末に込められた悲しさが、より深く見えてきました。

おわりに

今回の授業では、子どもたちが探偵団となり、証言メモを手がかりに三つの謎を解き明かしていきました。

登場人物の心情を考えるとき、つい「悲しい」「うれしい」といった気持ちを言葉にするだけで終わってしまいがちです。

しかし、文章の主語や登場人物の行動、言葉の変化に着目すると、心情が変化した理由まで考えることができます。

「ごんぎつねめ」から「ごん、お前だったのか」へ。

この短い言葉の変化の中に、兵十の思い込み、気付き、そして後悔が詰まっています。

子どもたちと一緒に、叙述を根拠にしながら、物語の奥にある登場人物の思いを読み深めることができました。

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